クリームパーラー糖衣B

お砂糖とスパイスとカオス

涙も出ない 悲しくもない なんにもしたくない

2020年1月8日、こぶしファクトリーが今年の3月末のコンサートをもって解散することが発表されました。

こぶしファクトリー活動終了のお知らせ ニュース詳細|ハロー!プロジェクト オフィシャルサイト - http://www.helloproject.com/news/11547

 

私は情報を得るのが遅いので、発表の翌日にこの一報を知ったのですが、最初は信じられなかったし、なかなか受け止めることが出来ませんでした。
なんというか、現実が自分を上滑りして行って、きちんと届かないまま流れていく感覚というか。
知り合いに会えば挨拶することは出来るし、世間話で相槌も打てるし、笑顔も作れるけれど、それはなんとか表面的な対応をしているだけで、心の底では感情がうまく働かず、ひたすら呆然としているだけというか。
しばらくはそういう茫然自失の状態で、それからようやく、
「これは現実なんだ、泣いても喚いてもこぶしは今年の3月30日で解散してしまうんだ」
と実感してからは、言葉に出来ない悲しさと、とてつもない虚しさが襲ってきました。

 

こぶしファクトリーは、2015年にメジャーデビューしたハロプロのアイドルグループです。

こぶしファクトリー:プロフィール|ハロー!プロジェクト オフィシャルサイト - http://www.helloproject.com/kobushifactory/profile/

 

一見風変わりなグループ名の由来は、

>春の訪れを告げるように、他の木々にさきがけて白い花を梢いっぱいに咲かせる日本原産の花、コブシ(辛夷)。コブシの花のように「優美」でありながら、コブシという名前の由来でもある(にぎりこぶし)に象徴される「力強さ」を兼ね備えたグループに なってほしい、という想いを込めて名づけられました。

とのこと(上記ページより引用)。


そのグループ名とデビュー曲のインパクトで、当時から気になる存在ではあったけれど、私が本格的に彼女たちを応援し始めたのは、それから2年ちょっと経った頃。
当初は8人グループだった彼女たちの中から、あれよあれよと脱退者が続出し、気づけば短期間(約半年)で3人が居なくなり、5人グループとなった激動の時期の只中です。
1stアルバム「辛夷其の一」を聴いて、ちょうどこぶしの歌の魅力に惹かれ始めていた頃だったこともあり、率直に言って、グループの今後がとても心配になりました。
立て続けの脱退で残ったメンバーの士気が落ちていないか、このままグループが存続できるのか。そういった不安に居てもたってもいられなくなり、
(もしかしたらこの機会を逃すと、こぶしを見られなくなるかもしれない)
そんな危機感に背中を押されるようにして、こぶしの単独ライブに初めて足を運びました。

 

こんな状況なのだから、意気消沈して俯くメンバーが居たり、パフォーマンスが精彩を欠いたりしていることもあるだろう。それでも、今のこぶしを応援しているファンがいることを伝えられればいい。そんな風に思っていました。

けれど、そんな後ろ向きな予想は、ライブが始まった瞬間に裏切られました。

そこに居たのは、一曲一曲にひたむきに想いを込めて歌い踊る、メンバーひとりひとりの真摯な姿。気合の入ったまとまりのあるパフォーマンスに、舞台から目が離せないほど魅了されました。
私の杞憂など吹き飛ばすように、彼女たちは顔を上げ、前を向き、笑顔でキラキラと輝いていました。
「このままこぶしファクトリーを終わらせるわけにはいかない」
そんな切実で熱く真剣な決意が、ステージを見ているだけでこちらにも伝わってきました。

 

その姿に胸を打たれて以来、私はこぶしのライブやイベントに積極的に足を運ぶようになり、こぶしファクトリー推しの「こぶし組」となりました。

 

まとめ役を担うしっかり者の最年長、冷静に見えて長文ブログには熱さが溢れる、グループ随一の安定した歌唱力を持つリーダー「あやぱん」こと広瀬彩海
抜群のスタイルながら、長い手足と小顔を裏切る無邪気さと漢気で皆を魅了する、不動のセンター「はまちゃん」こと浜浦彩乃
癒し系で、多大な包容力と可愛らしい声を持ち、観音菩薩の如きスマイルでメンバーと客席を照らす「さこちゃん」こと和田桜子
歴戦の戦士のごとき鋭い眼差しで迫力あるパフォーマンスを披露するが、MCになると天然ボケで周りを和ませる「みなみな」こと野村みな美
大人っぽく見えて最年少、整った美形ながら力強いボーカル、しっかり者に見えて甘えん坊な一面を持つ、ギャップが魅力的な「れいれい」こと井上玲音

 

5人がお互いに支え合い、努力して、どんどんスキルを高め合っていく様が眩しく、微笑ましく、頼もしかった。
とりわけアカペラに代表されるメンバー全員の歌唱力の向上は目覚ましいものがあり、舞台に立つたびメキメキと成長していく彼女たちを見ていると、それがまるで自分のことのように嬉しかったし、
「こんなにこぶしファクトリーは素晴らしいんだぞ!」と喧伝したくなるくらい誇らしかった。
これからも彼女たちを応援し続けるのはもちろん、こぶし組以外にはまだまだ知られていない彼女たちの良さをハロプロ内外にもっと知ってもらいたい。そしてこぶしファクトリーをもっと大きな舞台に立たせてあげたい。
ライブでパフォーマンスを見た後は、感動とともにそんな決意を新たにするのが常だった。

 

女性アイドルである以上、ましてやハロプロに所属している以上、アイドルをやめる日が来るのは仕方ない。
いつかは彼女たちも卒業する時が来る、それは分かっていた。


けれど、彼女たちが口にした「こぶしファクトリーで武道館に立つ」という夢を果たせないままで、ましてやこの顛末についてメンバーが悔しさやファンへの申し訳なさを表明している中で、解散という結果を告げられるのは、率直に言ってとても苦しく、未だに心の整理が出来ていない。
ファンとして力が及ばなかったことを後悔すればいいのか、解散まで残り3ヶ月もない急なタイミングでの報告をした事務所に憤ればいいのか、3月30日という年度末のド平日に開催される解散ライブにとても行けそうにない自分の仕事のスケジュールを恨めばいいのか、気持ちの持って行き場が分からない。
でも、こぶしファクトリーがどんな環境でもひたむきにアイドルという職業と向き合って、努力を実力に変えてきたのをこの目で見て知っているから、いくら解散がショックでも、それを決断した彼女たちを責めることなんて出来ない。

 

自分でもこんなに分かりやすく打ちのめされるとは思わなかったし、いい大人なのに思い通りにならない自分の情緒が情けないやら悲しいやらで、なかなかメンバーのことを笑顔で見送れるメンタルになれなくて申し訳ないと思う。
こんな時でもこぶしのメンバーはこぶし組を思いやったコメントやブログを書いてくれているから、余計に。

 

余談だが、自分はカントリー・ガールズがきっかけでハロプロの現場に通うようになり、昨年のカントリー活動休止の衝撃がいまだに受け止め切れていない未練がましいオタクでもあるのだが、それがここにきてこぶし解散と合わせてボディブローのようにじわじわと効いてきており、余計悲観的なスパイラルに陥ってしまっている。弱り目に祟り目という感じである。

 

今は、一日置きに下がったり上がったり下がったりするメンタルに振り回されながら、死んだ魚の目をして社会生活をこなし、一人になるとハロプロの失恋ソングをひたすら聴いて眠りに就く日々である。
モーニング娘。の失恋ソング「シルバーの腕時計」の中で、主人公は失恋のショックにより「悲しい歌は今は要らない」状態になったが、私はこぶし解散のショックで「悲しい歌しか今は聞けない」状態になってしまった。
そんな中でも特にリピートしているのが、日記タイトルの℃-uteの曲だ。
人間というのは、あまりに強いショックを受けると、この曲のように喪失感や無力感に苛まれたり、「私ってなんなの」と自分の存在意義すら分からなくなって何か答えてもらいたくなったりするのだなあと身をもって実感している。
この曲でメインボーカルをつとめるマイマイ萩原舞)の、幼さのある良い意味で尖った声質が、歌詞の切実さを増幅させている気がして、改めて良い曲だなあと思う。